競合
商圏分析の手法と実際
商圏分析の意義
ショッピングセンター、アミューズメント施設、温浴施設、複合施設等の商業施設においては、オフィスビル等の一般的な不動産物件タイプと違って、建物への入居者やテナント付けを行っていくばかりでなく、入居した後でも施設への一般顧客への集客という行為が不可欠となるのが大きな特徴だ。このようなことから、これらの商業施設の新規開発やリニューアル戦略を構築する際には、商圏分析というプロセスが重要になる。
商圏分析は、より具体的には、来店者予測、売上予測、競合分析、出店戦略等の中核を占める作業だ。また既存施設のリニューアル戦略策定の上でも、既存店の再生や売上改善のためにも重要であり、この段階でのより妥当性の高い分析が、実際の運営後の成否を大きく左右すると言っても過言ではないだろう。
本稿では、商業施設における商圏分析の手法と実際を紹介していきたい。
商圏の特性と分類
商圏とは、日常的に消費者が来店できる地理的範囲のことであり、そのなかに分布している消費者の数を商圏人口と言う。施設所在地の都道府県や市町村等の行政単位人口ではなく、自動車や徒歩での移動時間で地域を区分するのが正確な方法だ。
商圏は、対象となる商業施設や個店の商品・サービスの特性によって分類される。商品・サービスの最も典型的な分類としては、最寄品・買回品があり、前者は一般の家庭で日常的に使っているもの(食料品、医薬品、金物等)、後者は品質・デザイン・価格などをよく比較して購入するようなものを指す。これに準じて、最寄商圏とは最寄品を買いに来る消費者が住んでいる範囲をいい、買回商圏とは買回品を買いに来る消費者が住んでいる範囲をいう。
このようなことから、商圏規模は施設や店舗の業態や規模によっても大きく異なる。日常的に利用するスーパーマーケットの場合、一般的には、駐車場付きで自動車で5-10分程度、なければ自転車で5-10分程度となる。コンビニエンスストアの場合には、その特性からさらに商圏は狭くなり、通常は徒歩で5-10分程度となる。一方で、都心のターミナル駅付近に立地する百貨店の場合には、電車や自動車で30分-1時間程度と商圏は広くなる。
1次商圏、2次商圏、3次商圏との分類も一般的だ。もっとも、この階層区分については、対象となる商業施設や店舗によって範囲が大きく異なるから注意が必要だ。例えば、最も重要な対象マーケットとなる1次商圏は、通常商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域を指すが、先の通り、店舗タイプがコンビニエンスストアなのかデパートなのかなどによって範囲は大きく異なるわけだ。
商圏分析の手法とポイント
商圏分析手法のモデルとしては、古典的なものとして、ライリーの法則やハフモデルなどがある。これらの商圏分析モデルは、「ある消費者がある商業施設を選択する確率は、売場面積に比例する一方、二者間の距離に反比例する」との考え方を前提にしているのが特徴だ。実務的には、これらの商圏分析モデルを活用しながらも、それぞれの商業施設の特性や規模等に応じて、様々な定性分析や定量分析を実施していくことになる。
商圏分析、来店者予測、売上予測等において大きな影響をもつものとしては、以下の要因が指摘される。
①店舗面積
②建物構造
③視認性
④動線
⑤駐車場台数
⑥施設へのアクセスやアプローチの難易度
⑦店舗前交通量(ポイント規模)
⑧競合状況
⑨対象マーケットの規模
⑩対象マーケットの特性
商圏分析の実際
商圏分析の手法やデータベース等は非公開であることが多いが、ここでは参考として、温浴施設における商圏分析の実際の一部を紹介したい。
(1)商圏人口の算定
対象となる温浴施設の商圏人口を算定する。その方法としては、簡易的に地図を使ったり、自動車で実測するなどがある。もっとも、「施設から半径2キロ」のように地図を使う方法はあくまで簡易的なものであり、実際の商圏は地形・構造物等の存在・交通状況等によりかなりいびつな形となることに注意が必要だろう。
(2)対象施設の評価
上記の商圏分析の手法とポイントで指摘したような点も含めて、対象となる温浴施設の評価を行う。温浴施設の場合には、店舗面積、駐車場台数、視認性、施設へのアクセスやアプローチの容易さ、競合状況が特に重要だ。
(3)来店者予測
多店舗展開している温浴施設事業者や実績を有するコンサルティング会社などでは、過去の実績に基づくデータベースを保有している。特に、会員組織をもつ事業者では、実際の会員のデータから来店者予測を行っており、相対的に高い予測精度となっている。典型的な来店者予測の算式は以下の通りである。
来店者予測=商圏人口×顧客化率×来店頻度
商圏人口: 上記(1)で算定
顧客化率: 対象となる施設に経常的に顧客となる割合。上記(2)等で算定
来店頻度: 対象となる施設に1ヶ月当り来店する頻度。上記(2)等で算定
ちなみに、温浴施設の場合においては、1次商圏とは自動車で5分以内を指すことが一般的であり、Aクラスの施設の場合には、顧客化率30%、来店頻度1.2回が標準値となる。温浴施設の成否は、5分以内商圏の人口、対象施設の水準、競合状況が大きな鍵となっている。
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商業施設の売上方程式
商業施設の売上方程式
売上方程式とは、「売上=数量×単価」のように、売上を構成する要因を「因数分解」して、売上を分析する手法である。他の不動産物件タイプと大きく異なり、施設全体の売上が賃料収入においても最大の関心事である商業施設にとっては、売上方程式はバリューアップや再生戦略を実行する上でも極めて有用な手法である。
売上方程式で典型的なものとしては、「売上=顧客数×購買頻度×購買単価」、「売上=顧客数×購買単価×1回当りの購買個数×購買頻度」等が指摘される。本稿においては、商業施設の売上方程式について紹介していきたい。
売上方程式の意義
「売上=数量×単価」を基本的なものとする売上方程式において最も重要なのは、自社や対象プロジェクトにとって最適となるような「算式」を具体的に策定していくことである。売上方程式を活用する上での注意点は、「因数分解」した要因のなかで、何が最も売上に対して影響力が大きいのかを、実績データ等を基にして優先順位付けしていくことである。それぞれの要因について、自社の実績データ、競合他社のデータ、顧客のデータ等と比較して分析していくことが不可欠だ。売上方程式は、「1ヶ月に必要な売上個数はいくつか」、「1ヶ月に必要な来店客数は何人か」、「1ヶ月に必要な新規顧客数やリピーター顧客数は何人か」等、売上の主な要素の目標数値を設定する上でも重要なツールとなる。
売上方程式の応用例としては、営業活動の成果を分析するのに用いられる訪問方程式(「売上=総訪問件数×受注率×受注単価」)、費用面の分析に用いられる費用方程式などがある。より具体的な事例としては、レストラン等飲食の売上方程式は、「売上=顧客数×客単価×営業日数×店舗数」、「顧客数=席数×満席率×回転率」が基本形となっている。
商業施設の売上方程式事例
図表1は、商業施設の売上方程式の事例である。売上を来店客数と客単価に分解した後で、それぞれを「対象顧客数×来店頻度」、「品揃え等の魅力度×購買頻度」等に分解している。図表1のピラミッドのインフラストラクチャーを形成しているのは、本章第1回目(2008年2月号連載)でも紹介した「商圏分析の10大ポイント」である。実務的には、これらの10大ポイントの各要素も活用しながら、定性・定量分析を行い、対象となる商業施設に最も適した売上方程式を策定していくことになる。尚、来店頻度や購買頻度等、対象となる商業施設にどれだけ来店した上で、実際にそれだけの消費を行うか(いわゆる「コンバージョン・レート」)は、最終的に売上を上げていくには極めて重要な要素だ。これらの要素については、対象となる商業施設が対応する商圏のなかにおいて、「ファースト・チョイスの施設」(顧客が最もよく利用する施設)なのか、「セカンド・チョイスの施設」(顧客が2次的に利用する施設)なのかの施設ポジショニングによって、大きくその水準が異なるものであることを指摘しておきたい。
図表2の売上方程式は、売上を構成する要因のなかで、特に対象となる商業施設における潜在的な顧客層、同施設における顧客の滞在時間、顧客に対する販売価格に着目したものである。実務的には、これらの要因を、さらに対象となる商業施設における来店者の歩行距離、同施設内の動線、個別店舗への入店率、買い上げ点数、買い上げ店舗率等に分解して分析を行っていくことになる。
最後に、合理性の高い定性・定量分析を踏まえて策定された売上方程式は、どのような要因にどのような施策を実行していくことでより効果的な売上改善を果たしていくことができるかという実務上も明快なマーケティング・ロジックとなるものであることを強調しておきたい。
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商圏分析と売上方程式
商圏分析と売上方程式
このホームページにおいては、「商圏分析の手法と実際」や「商業施設の売上方程式」を紹介してきた。商業施設のバリューアップ・再生戦略においても、商圏分析と売上方程式は最も重要なツールであることに加え、売上予測というツールを通じても、これらの二者は密接にリンクしている。実際に、当社グループの実務においても、商圏分析、売上予測、売上方程式の3つをリンクさせて商業施設のバリューアップ・再生戦略の策定や実行に活用しているが、本稿では、それらの概要と実務事例の一部について紹介していきたい。
商圏分析の実際
図表1は、当社グループにおける商圏分析の実際をチャート化したものである。商圏分析は、対象となる商業施設における来店客予測や売上予測を行うために実施するものであるが、最初のプロセスとしては、商圏人口の算定を実施することが挙げられる。商圏人口の算定に当っては、データベースを使った簡易評価を行った後で、徒歩や自動車での実地調査を行うプロセスとなる。
次の作業としては、対象となる商業施設や競合となる商業施設の評価が指摘される。これらの評価に当っては、ヒヤリングやアンケート等を含む各種の実地調査や比較分析を実施するが、中核となる作業は、第1回目でも紹介した「商圏分析の10大ポイント」を活用しての定性・定量分析だ。
これらのプロセスを踏まえて来店客数予測や売上予測を実施していくことになるが、特に売上予測においては、各種の「売上方程式」も併用しながら、「商圏分析の10大ポイント」を統計解析と比較分析両面において活用していることが、当社グループにおける分析手法の大きな特徴となっている。
商業施設の売上方程式
本章の第3回目においては、「商業施設の売上方程式」として、2つの事例を紹介したが、本稿においては、さらに基本的な考え方とともに、2つの事例を紹介したい。
売上方程式とは、「売上=数量×単価」のように、売上を構成する要因を「因数分解」して売上を分析する手法である。どのように「因数分解」したら効果的であるのかは、対象となる商業施設の特性によっても異なるが、来店客数に着目した売上方程式(「売上=来店客数×客単価」)、販売数量に着目した売上方程式(「売上=販売数量×1品当り単価」)、売場面積に着目した売上方程式(「売上=売場面積×坪効率」)等が主なものとして指摘できる。
図表2は、来店客数に着目した売上方程式の事例である。この売上方程式においては、来店客数を既存客数と新規客数に分解しているが、対象となる商業施設によっては、来店客数を「来店客数×買上率」、「通行客数×来店率×買上率」等に「因数分解」した方が店舗実体をより正確に反映したものになる場合もある。
図表3の売上方程式は、当社グループが中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略において多用しているものの一つである。地方における多くの中規模商業施設では、「イオンモール」等に代表される超大型競合施設の誕生により、実質的な対象商圏が狭小化していることが観察されている。このような中規模商業施設を対象としてバリューアップ・再生戦略の策定や実行をしていく場合には、複数の売上方程式を併用するなかにおいても、売上を「商圏人口×1人当り消費額×当該マーケットにおけるシェア」に分解した上で、各種の定性・定量分析を実施していくことが不可欠だ。なぜなら、商圏が狭小化している中規模商業施設においては、より大きな商圏を対象とする大規模商業施設以上に、対象商圏の市場規模や消費額の正確な把握と競合対策も含めたシェアアップのための店舗戦略が重要となるからである。また当該売上方程式は、従来の売上方程式が既存顧客の実体把握には適している一方で、対象となるマーケット全体の状況や拡販余地をきちんとカバーしていないという欠点を補うという重要な役割も果たしている。
マーケット環境がさらに厳しくなってきているなか、適切なバリューアップ・再生戦略の策定と実行には、徹底的な分析・評価がその前提として不可欠であり、各種の定性・定量分析力並びに商業施設の運営・管理経験に基づく洞察力を踏まえた商圏分析と売上方程式は、マーケット・消費者分析や競合施設・類似施設分析などとともに、分析・評価作業の中核を成すものであることを強調しておきたい。
図表1.商圏分析の実際
図表2.「マージングポイントの商業施設の売上方程式」③
図表3.「マージングポイントの商業施設の売上方程式」④
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中核
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通行客
通行
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適切
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最初
強調
当該
併用
従来
実地調査
本章
リンク
場面積
複数
拡販
地方
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実質的
前提
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バリューアップ戦略事例
地域の中規模商業施設の多くは、不況の影響を受けて苦境に喘いでいます。
そこには全ての業種や業態における再生やバリューアップのエッセンスが含まれています。
どこに問題の所在があるのか。どこにギャップが生じているのか。
規模やマーケットシェアの拡大だけでは立ち行かなくなってきているなかで、どのような対策を講じていったらいいのか。
中規模商業施設を通じて、再生/バリューアップ戦略を学んでいきます。
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はじめに:なぜ「繁盛魚屋に学ぶ業績改善」なのか?
不況でも儲けている繁盛魚屋とは?
当社では、これまでたくさんの業種の会社に対して経営コンサルティングを提供してきましたが、ビジネスにおいては、経済全体が好況の時に調子がいい業種、不況の時にでも比較的堅調な業種があります。
現在のような不況期においては、上場企業のデータなどを見ると、小売業全体の売上が低迷しているなかで、食品スーパー会社は比較的健闘していることがわかります。
そのなかでも、特に「生鮮3品」と呼ばれている鮮魚・青果・精肉の売上は底堅い動きとなっています。
これは、食品のなかでも、これらの3部門が特に生活必需品的な商品であること、素材商品であり余分なマージンが上乗せされていないこと、不況で外食が減り家庭で料理するケースが増えていることなどが影響しています。
それでは、不況においても底堅い売上を上げている生鮮部門のなかで、このHPでの「食材」である鮮魚に目を向けて考えてみることにしましょう。
不況でも儲けている繁盛魚屋とはどのようなお店でしょうか?
ここで、「儲けている」というのは、ビジネスにおいては「利益を上げている」ということと同じ意味になります。
お店で商品を販売していくことで獲得する売上高は、そのまま利益になるわけではありません。
単に売上が上がっているだけではなく、会社を維持していくのに支払わなければならないいろいろな費用を支払った上で、利益が残っていることが「儲けている」ということになります。「売上―費用=利益」という利益の算式の結果がプラスであることが「儲けている」ということなのです。
不況期には、値段が安いものが人気を集める傾向にあります。
それでは、「不況でも儲けている繁盛魚屋」とは魚の値段を安くして売っているお店のことでしょうか?
不況なのに売価を下げて売っていったら、利益はジリ貧にならないのでしょうか?
それとも「不況でも儲けている繁盛魚屋」とは、何か他に商売の秘訣を持ったお店なのでしょうか?
以降で詳しく見ていくように、「不況でも儲けている繁盛魚屋」には、大手スーパーの鮮魚部門ではなく、街の鮮魚専門店のようなところが多いのが特徴です。
大手スーパーが作り上げた「仕組み」に乗らないことを研究して、むしろその「仕組み」に乗らないことをまとめ上げて独自の「仕組み」にしていること。
自分が勝てる土俵を探し、自分が勝てる土俵で勝負していること。
「何をしないか」にこだわって勝負していること。
自分の強みを徹底的に磨き続けていること。
これらの点も、「不況でも儲けている繁盛魚屋」の共通点となっています。
魚屋の利益構造はどのようになっているのか?
このHPでは、不況でも儲けている繁盛魚屋を通して、経営学や業績改善のエッセンスを学んでいきます。
繁盛魚屋のノウハウをいろいろとご紹介していく前に、まずは魚屋の利益構造を見ていきましょう。
利益とは、売上から費用を引いた残りでした。
利益には、費用を会社全体のどこまでのコストを含めて考えていくかで、いくつかの種類があります。
このHPで最低限おさえておいていただきたい知識としては、費用は原価と経費に大きく分かれること、売上から原価を引いた利益を売上総利益あるいは粗利益といい、そこからさらに経費を引いた利益を営業利益ということです。そして、原価とは、商品を仕入れたり製造したりするのに必要な費用のこと、経費とは、商品を売るのに必要な販売管理費のことをいいます。
魚屋の利益構造も、上記のように、売上から魚を仕入れて切り身などとして売るために必要な費用である原価を差し引いたものが粗利益となり、そこから販売管理費を差し引いたものが営業利益となります。
それでは、魚屋の利益構造を、魚という商品レベルで見ていくとどのようになるでしょうか?
魚の利益構造は、魚の販売価格と魚の原価との差額で決定されます。魚の販売価格が原価を上回った分が利益となり、下回った分が損失となります。この段階の利益が粗利益です。
魚の利益構造の大きな特徴の一つは、原価が次のように3つに分けられることにあります。
まず始めに、魚の仕入価格があります。ある魚を1匹100円で市場から仕入れてきたとしましょう。この100円のことを商品原価といいます。商品原価の引下げには、「バイヤーの技術」が重要です。
2番目には、歩留まり原価があり、これが魚屋独特の費用です。100円で仕入れた魚も、頭を外し、エラやワタを除き、さらに中骨を外して切り身にしていくと、販売可能な生肉の部分は限られてきます。もともとの魚全体に対して、販売可能となる部分の割合のことを歩留まり率といいます。そして、販売可能な部分だけで、もともとの魚1匹の仕入原価をまかなったと仮定した場合の原価が歩留まり原価。例えば、歩留まり率が80%の魚は、その歩留まり原価は、100円÷0.80で125円となります。歩留まり原価の引下げには、「職人の技術」が重要です。
3番目が製品原価です。魚を実際に販売していくためには、トレイを用意したり、刺身であればツマも必要となります。それらの費用を含めた原価が製品原価です。15円のトレイを使って魚の切り身を売っていくとすると、その製品原価は140円となります。製品原価の引下げには、「ものを大切にする意識」が重要です。
魚の利益構造は、以上の3つの原価から構成されている製品原価140円に対して、製品である魚の切り身の販売価格をいくらで設定していくかで決定されます。販売価格の設定に当っては、製品原価を回収しなければならないだけでなく、本社スタッフのお給料などの費用も含めて考えたり、お店の利益を考えたりして決定していく必要があります。
お店としては、後で述べる魚が売れ残った場合の廃棄ロスの見込みなども価格に転嫁して、できるだけ高い価格で魚を売っていきたいところです。もっとも、お客様が納得するような水準に価格をおさえることができなければ、結局は魚は売れ残ることになります。製品価格を合理的に決定する技術を「値入れ技術」といいます。HP後半でも詳しく見ていきますが、値入れには、「お客様を大切にする意識」が重要です。
魚屋の経営で重要なポイントは何か?
経営において、最も重要なポイントのことをキーサクセスファクター(「KSF」)といいます。お客様を引き寄せ、競合他社と戦っていく上で、最も重要となる成功要因のことです。
それでは、魚屋におけるKSFは何でしょうか?
それは、魚を商品として見た場合の大きな特徴である鮮度です。
鮮度とは、商品がどれだけ新鮮なのかということ。
鮮魚の最大の特性は、変質や腐敗がしやすいこと。魚が市場からお店の到着し、実際にお客様に販売されるまでの経過時間や管理状況などの鮮度管理が、魚屋のKSFなのです。
魚屋のビジネスにおいては、鮮度はお客様を引き寄せるポイントとなる他、これを損なうと商品がたちまち売れなくなってしまうという生命線なのです。魚屋では、加工された一部の商品を除くと、ほとんどの商品がその日に売り切らないと売り物にはなりません。鮮度が損なわれると売り物にはできないため、廃棄しなければいけなくなります。これを廃棄ロスといいます。その日に売り切らないと廃棄ロスが発生してしまうということが、魚屋の経営においては最も重要なポイントの一つです。
魚を加工する技術が利益を大きく左右するということも魚屋の経営において重要なポイントです。
魚の利益構造で見たように、魚の原価には歩留まり原価という特殊なものがありましたよね。これは、魚をさばいて切り身や刺身にして販売していくのに、商品としては使えない部位は処分しなければならないことに起因している原価です。
実は、1匹の魚からどれだけのグラム数の切り身や刺身を作れるのか、どれだけ販売可能な生肉部分を残せるのかは、魚をさばく職人の技術に大きく依存しているのです。「1匹1キログラムの魚を腕のいい職人が調理した場合には700グラムの生肉が残り、新人の職人が調理した場合には500グラムの生肉しか残らない」と業界ではよく言われています。
魚の販売価格が生肉のグラム当りで同一だったとすると、どれだけの生肉を調理した後で残せるかがお店の利益に直結するのです。技術の低い職人が多い魚屋は、結局は仕入価格が高止まりしているのと同じくらいお店の損益上はインパクトが大きいわけです。
シンプルさや明快さが人や会社を動かす
みなさんは、今の世の中を見て、以前よりもシンプルになってきたのか、複雑になってきたのか、どちらだと感じますか? みなさんの会社の状況はいかがでしょうか?
現在のビジネス環境においては、インターネットの浸透に伴う情報量の増大などによって、様々な社内外のシステムがより複雑になってきています。商品を見ても、ビデオ、パソコン、携帯電話など、どの電化製品も機能や種類が複雑化しています。世の中が一見便利になった一方で、複雑になってきたと思う方が多いのではないでしょうか。
「シンプルさや明快さが人や会社を動かす」
ビジネス環境や商品の機能などが複雑になればなるほど、シンプルさや明快さが人や会社を動かす。
これは、私がオーナー企業向けに戦略コンサルティングを行うようになって、経験的に通感していることです。
「共感性×納得性」が人や会社を動かす
それでは、どうして「シンプルさや明快さが人や会社を動かす」のでしょうか?
それは、人間の「右脳×左脳」という頭脳の構造にも関係していると思います。
経営コンサルティングの仕事で、クライアント企業の中に入り込んでいつも思うのは、人はシンプルで明快なストーリーを提示されないと、なかなか簡単には動かないということです。
まずその企業において、どのような原因から問題が発生しているのか、そしてどのようにしたら利益を拡大していくことができるのかは、たくさんの要因が複雑に絡み合っています。
一方で、物事が複雑なままでは、多くの社員は自分がどのように動いたらいいのかわからないでいます。
そこで重要となるのが、複雑な状況をシンプルで明快に説明していくこと。その上で、シンプルで明快なアクションプランを提示していくことです。
そして、ここでさらに重要なのは、「シンプルで明快」であるというのは、発生している問題の本質や要点を絶対に外していないものであること。一人一人のやるべきことが明確になっていることや、一人一人のレベルにまで「落として」いくことも大切です。
人間の左脳は、ロジックや論理性をつかさどっています。左脳に対しては、シンプルで明快なロジックで物事を説明してあげることで納得感が生まれてきます。いわゆる「腑に落ちる」という感覚ですね。この感覚が生まれてくると、人は自発的に行動しようとする意欲が湧いてきます。
一方で右脳は、クリエイティビティーや感情をつかさどっています。右脳に対しては、シンプルで明快なストーリーで説明してあげることで共感が生まれてきます。共感が生まれてくると、人は自分のためだけではなく、共感を持った相手や他の人達のためにも頑張ろうという意欲が湧いてきます。
このように、シングルで明快なストーリーを提示することによって、「共感性×納得性」が人や会社を動かしていくのです。
それは、「自分自身で納得していることなので頑張ろう」という意識と、「自分が共感したことなので、他の人達のためにも頑張ろう」という意識とが掛け算になっているから強力なのです。
なぜ「繁盛魚屋に学ぶ業績改善」なのか?:「経営の縮図」としての繁盛魚屋
会社は、上場企業でも、中小企業でも、一つ一つの商品や事業の集合体です。会社として多くの商品や事業が集合してしまうとわかりにくくなる傾向がありますが、一つ一つに分けて考えてみると、「シンプルさや明快さが人や会社を動かす」ということがよく見えてきます。
経営で起きる問題というのは、企業規模の大小や業種にかかわらず、面白いように共通しているからです。
このようななかで、多くの実戦事例のなかで、繁盛魚屋をこのHPの題材に選んだのは、鮮魚がみなさんにとっても最も身近でとっても好きな商品の一つであると思ったからです。「人・物・金」という経営の全ての側面の本質的な部分が凝縮されているものだとも思います。
特に、「不況でも儲けている繁盛魚屋」の秘訣を考察してみると、企業規模の大小や業種にかかわらず、みなさんの会社でも「不況でもどのようにしたらより儲けられるか」ということの参考になるものだと思います。
鮮魚部門は、食品スーパーにおいては、集客力は高い部門である一方で、なかなか利益が出にくい部門となっています。これは、鮮魚の生命線でもある鮮度管理の難しさ、商品の多様性やアイテムの多さなどによるものです。つまりは、すぐに売り切らなければならないという鮮度管理の難しさ、魚種の多さ、扱い基準の多様さなどから、すぐに廃棄ロスが出てしまうからです。だからこそ経営学の重要なエッセンスがいろいろと凝縮されているのです。
経営改善には様々な分野があり、それぞれの分野においても様々な手法があります。そこで、このHPにおいては、当社がオーナー企業向けの戦略コンサルティングにおいても実際によく使っている手法を中心に紹介することにしました。それぞれの手法を「シンプルに明快に」説明していくこと、みなさんのビジネスの現場でもお使いいただけるように、できるだけ多くの事例を盛り込むこと。そんなことに腐心してできたのがこのHPです。繁盛魚屋の事例以外にも、いくつかの業種の会社が事例として登場してきます。「繁盛魚屋」を作り上げるノウハウを通じて、より多くの経営者のみなさんが業績改善のきっかけをつかんでいただけたら幸いです。
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以降
獲得
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経過時間
経過
経済全体
一見
業績改善のための3C分析
「3つのことを同時に見なさい」(3C分析)
繁盛魚屋を作っていくためには、「3つのことを同時に見なさい」と言っています。3つのことというのは、お客様、ほかの魚屋、自分のお店のことをいいます。
3つのことを同時に見なさい。
簡単なようで難しいのは、これらの3つを同時で見ること。同時に3つを見ることができれば、損が出ることはめったにない。損が出る場合は必ず3つのうちのどれかを見落としてしまっているからなのです。
なぜ「3つのことを同時に見なさい」なのか。
以前、私のオフィスの近くにはタイ料理屋さんがありました。そのお店に初めて入ったときのことです。店内の印象は内装がモダンで、一見、タイというよりフレンチかなと違和感を覚えました。席についてメニューに目を通すと、トムヤムクンやガパオなどの定番メニューに混ざって、なぜかパスタやピザまでありました。おそらく近くの競合店を意識して、メニューの幅を広げようとしたのでしょうが、味も中途半端で、美味しいタイ料理を期待していた私は、がっかりしてお店を出たことがあります。
皆さんもお店に入ったとき、「あれっ」と思った経験はありませんか。そのお店の雰囲気に似つかわしくないのに、流行店の真似をしているのを見て違和感を覚えた、といった経験です。
お客様に違和感を与えてしまったら、もちろんお店の集客力は弱くなります。魚屋の場合で考えてみても、なにか違うな、とお客様に思われていたら、次のような理由があるのではないでしょうか。
・ お客様とライバル店の研究はしているものの、自分のお店の強みではないことをしている魚屋。
・ ライバル店と自分のお店の研究はしているものの、お客様のことを見失ってしまった魚屋。
・お客様と自分のお店の研究はしているものの、ライバル店の動きに注目していない魚屋。
これらの3つが、魚屋が繁盛しなくなる典型的なパターンです。 お客様に何かが違うと思われてしまうお店には、3つのことが同時に見えていない場合が非常に多いのです。自分のお店のオリジナリティはなにか、強みはなにか、お客様はお店に対してなにを求めているのか、顧客ニーズはなにか、また、近くにある競合店はどんな強みで勝負しているのかを同時に見て、総合的に考え、分析していくことが、ビジネス成功の鍵といわれています。
「3つのことを同時に見なさい」は、3C分析の応用
最初に「3つのことを同時に見なさい」、とお伝えしましたが、経営学ではそれを3C分析と呼んでいます。経営学や経営戦略にはさまざまなツールがありますが、その最も基礎的なツールが3C分析なのです。3Cとは、お客様・Customer、他の魚屋・Competitor、自分のお店・Company、この3つを英語表記したときの頭文字をとったものです。魚屋をさらに繁盛させるために、集客の戦略を考えるとき、3Cを整理してみると、お店の問題点が改めて浮き彫りになってくるのです。
3C分析は、とてもシンプルな考え方であるのと同時に、使いこなすのは難しい
といわれています。実際に企業が失敗している点を分析してみると、3Cのうち、どれか一つの分析が不十分だったというケースが多いのです。
たとえば、いま考えている企画がお客様のニーズを満たすものであったとしても、競合先の強みを知らず、競合先の方がより魅力的で優位なアイディアなら、せっかく考えた売れるための企画も台無しに終わってしまいます。大事なことは、3つのCを三位一体で分析すること。経営学の世界では、3つのCを三位一体で分析する3C分析のプロセスがとても重要なのです。
顧客、市場、競合を分析した結果、導かれた成功要因に対して、自分の会社の内部の分析から分かった成功要因との違いを見つけて、アクションを導きだすことができる、そのための有効なツールが3C分析です。
魚屋で実際に行われた3C分析
それでは、街の魚屋を題材にして3C分析を見ていきましょう。
大手スーパーの鮮魚部門は品揃えも豊富で価格も魅力的です。普通の街の魚屋では簡単には太刀打ちできません。大手スーパーでは全国レベルで大量仕入をしており、それが低価格で販売できる大きな要因となっています。
このような状況のなかで、街の魚屋ではどのように大手スーパーの鮮魚部門に対抗していったらいいのでしょうか?
ここで最も役に立つ経営手法が3C分析です。3C分析では、まずは自社、競合他社、顧客のそれぞれにおいて重要なポイントをリストアップしていきます。最終的に3つから5つくらいの重要なポイントに絞っていきます。ここで重要となるのは、絞っていくプロセスの前には、できるだけ多くの要因をリストアップした上で優先順位付けするということです。
このお店では、まずは自分のお店の特徴について徹底的に自己分析し、最も重要と思われるポイントを3つに絞りました。それらは、「他のお店には負けない魚についての商品知識がある」、「お客様については顔と名前が一致するくらい親しく取引している」、「小さいお店である分、お客様に対してきめの細かい対応ができている」というポイントでした。
競合他社についての分析は、いろいろと研究してみた結果、次の3点に集約
されました。それらは、「最も直接的に競合しているのは大手スーパーであること」、「大手スーパーでは品揃え豊富で価格も安いこと」、「一方で、コスト削減に力を入れていることから、商品もサービスも標準的になってきていること」の3点です。
お客様についても徹底的に分析した結果、「お客様は景気低迷のなか低価格を求めている層が多いこと」、「その一方で、魚の需要やお客様のニーズも多様化してきていること」、「きめ細かいサービスを求めるお客様も根強く存在していること」がわかりました。
ここからが、3C分析を行う上で最も見逃せないところです。3C分析の注意点は何だったでしょうか?
そうですよね。3つのことを同時に見ていくことでしたね。
それぞれのCの重要なポイントを同時に考えていくと、そこから導き出される戦略の方向性は以下のような感じになってくると思います。
大手スーパーが標準的なサービス提供で十分に対応できていないきめ細かいサービスを求める消費者層に特化して、魚についての商品知識ときめ細かいサービスという強みを生かしたお店作りをしていくこと。
このお店では、戦略の方向性が3C分析で明確になったことから、さらに詳細な計画をこの本でも紹介するような手法を使ってつめていくことになります。特に次の章で紹介するSWOT分析を使って、自分のお店の強みを深堀りしていくのが効果的です。
前にも述べた通り、3C分析は3つのことを同時に見て、そこから戦略の方向性を導くことが大切である一方で、なかなか3つを同時に踏まえるというのは難しいものです。
とってもよくある失敗するパターンとしては、「ライバル会社がお客様にこんなことをやって流行っているからうちも会社でも同じようにやってみよう」といったケース。この魚屋のケースでいけば、「お客様の多くは低価格を望んでいて、大手スーパーの低価格販売もお客様に受けているので、うちでも価格を下げていこう」といった戦略を採用してしまう場合。大手スーパーは大量仕入に代表されるコスト削減ができているからこそ低価格で販売できるのであり、街のお店が単純に価格を下げたらまさに死活問題となってしまうでしょう。
最後に強調しておきたいのは、どうして経営学において数え切れないほどの手法があるなかで、3C分析が最も重要と指摘されているかという点です。
それは、「自分を知ること」、「顧客を知ること」、「競合を知ること」が、ビジネスにおいての3大要因であるからなのです。そして、これらの3大要因を考えることがとっても大切であるにもかかわらず、意外とできていないことが多い。だからあらためて3C分析と言っているわけです。「3つのことを同時に見なさい」とは、万国共通、業種を問わず、会社の規模を問わず、とっても大切なことなのです。
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