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商業施設のリーシング戦略

リーシング戦略の全体構造とプロセス

本章では、商業施設のバリューアップ・再生戦略として、商圏分析の手法と実際、再生戦略の事例等について考察してきた。今回は、商業施設のバリューアップ・再生のプロセスにおいて最も重要な要素であるリーシング戦略について紹介していきたい。

図表1は、リーシング戦略の全体構造とプロセスを取り纏めたものである。リーシング戦略の策定に当たっては、連載第47回で述べたように、自社施設分析、競合施設分析、消費者・マーケット・商圏分析等の分析・評価が不可欠である。徹底的な分析・評価を踏まえて、店舗戦略や店舗コンセプト等を策定していくのが次の重要なプロセスとなる。より具体的には、店舗戦略や店舗コンセプトを複数パターン策定した上で、各パターンにおいてフロアゾーニングを策定、施設全体のコアテナントやフロア毎のキーテナントを策定していく手順となる。一方で、店舗コンセプトと具体的なコアテナントとは高い相関関係にあることから、店舗コンセプトを確定していくのと同時にコアテナントを確定させていくのがリーシング戦略においては最も重要なポイントだ。各フロアのキーテナントや施設全体のサブテナント的なテナント企業は、コアテナントが確定した段階で当該コアテナントと相乗効果を生み出す先を中心にリーシングをしていくことが効果的だ。これらの主要テナントを確定させながら、図表2の通り、テナントミックスのエスキースを踏まえて全体のリーシングを進めていくことになるが、対象施設がリースアップ(100%の入居率とすること)できるか否かは、明確で合理性の高い店舗コンセプトの下に、プロセスの前半部分で主要テナントを確保できるかに大きく依存していることを指摘しておきたい。

テナントの賃料負担能力の把握

リーシング戦略を実行していくためには、テナントの業種業態毎の賃料負担能力を把握することが重要だ。業種業態によって店舗適性が異なるように、賃料負担能力も異なるからだ。

商業の分野においては、賃料や共益費等の費用は不動産経費や不動産特有経費と呼ばれている。賃料負担能力や不動産経費については、売上高総利益との割合で比較されることが多く、「不動産経費率」と言った場合には、売上高総利益に占める不動産経費の割合を指している。業種業態で差異があるものの、一般に、物販における不動産経費率4割前後、飲食での同数値3割前後、食品での同数値2割前後となっている。テナントミックス策定やリーシングを実際に進めていく際には、想定されるテナントの売上高利益率や在庫回転率等を試算した上で、テナント側の賃料負担能力を算定しておくのが効果的だ。より具体的な賃料負担能力や支払可能賃料を求めるには、売上高、売上高総利益率、不動産経費率等の数値が入手できれば、かなり精度の高い試算が可能だ。

「タテの立地条件」

前回は立地条件について詳解したが、商業施設においては、リーシング戦略を適切に実行していく上でも、「タテの立地条件」に精通することが重要となる。「タテの立地条件」とは、「立地内立地」とも呼ばれるものであり、「1階」、「2階」、「地下1階」等、対象となる商業施設内における立地条件のことである。

商業施設においては、同じ施設の中でも、フロアによって店舗適性が大きく異なってくる。一方で、フロアによって通行客からの視認性やアプローチの難易度も大きく異なってくる。一般的には、1階の賃料水準を100とした場合に、地下1階:75、2階:80、3階65というデータも指摘されている。もっとも、施設タイプが郊外の2層式大型施設の場合、駅に2階から接続している専門店ビルの場合などにおいては、2階部分も賃料水準が100に近いこともあり、「タテの立地条件」はケースバイケースであることに注意が必要だ。同様に、テナント側の業種業態によっても「タテの立地条件」は大きく異なる場合がある。例えば、美容室は1階よりも2階を好む傾向にある他、高級エステ等も羨望が良いことを前提として、上層階を好む傾向にある。

テナントミックスのエスキース、想定賃料の設定、施設全体の採算分析の実行に当っては、施設自体の立地条件のみならず、施設内の「タテの立地条件」も考慮する必要があることを強調しておきたい。

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