面積
商圏分析の手法と実際
商圏分析の意義
ショッピングセンター、アミューズメント施設、温浴施設、複合施設等の商業施設においては、オフィスビル等の一般的な不動産物件タイプと違って、建物への入居者やテナント付けを行っていくばかりでなく、入居した後でも施設への一般顧客への集客という行為が不可欠となるのが大きな特徴だ。このようなことから、これらの商業施設の新規開発やリニューアル戦略を構築する際には、商圏分析というプロセスが重要になる。
商圏分析は、より具体的には、来店者予測、売上予測、競合分析、出店戦略等の中核を占める作業だ。また既存施設のリニューアル戦略策定の上でも、既存店の再生や売上改善のためにも重要であり、この段階でのより妥当性の高い分析が、実際の運営後の成否を大きく左右すると言っても過言ではないだろう。
本稿では、商業施設における商圏分析の手法と実際を紹介していきたい。
商圏の特性と分類
商圏とは、日常的に消費者が来店できる地理的範囲のことであり、そのなかに分布している消費者の数を商圏人口と言う。施設所在地の都道府県や市町村等の行政単位人口ではなく、自動車や徒歩での移動時間で地域を区分するのが正確な方法だ。
商圏は、対象となる商業施設や個店の商品・サービスの特性によって分類される。商品・サービスの最も典型的な分類としては、最寄品・買回品があり、前者は一般の家庭で日常的に使っているもの(食料品、医薬品、金物等)、後者は品質・デザイン・価格などをよく比較して購入するようなものを指す。これに準じて、最寄商圏とは最寄品を買いに来る消費者が住んでいる範囲をいい、買回商圏とは買回品を買いに来る消費者が住んでいる範囲をいう。
このようなことから、商圏規模は施設や店舗の業態や規模によっても大きく異なる。日常的に利用するスーパーマーケットの場合、一般的には、駐車場付きで自動車で5-10分程度、なければ自転車で5-10分程度となる。コンビニエンスストアの場合には、その特性からさらに商圏は狭くなり、通常は徒歩で5-10分程度となる。一方で、都心のターミナル駅付近に立地する百貨店の場合には、電車や自動車で30分-1時間程度と商圏は広くなる。
1次商圏、2次商圏、3次商圏との分類も一般的だ。もっとも、この階層区分については、対象となる商業施設や店舗によって範囲が大きく異なるから注意が必要だ。例えば、最も重要な対象マーケットとなる1次商圏は、通常商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域を指すが、先の通り、店舗タイプがコンビニエンスストアなのかデパートなのかなどによって範囲は大きく異なるわけだ。
商圏分析の手法とポイント
商圏分析手法のモデルとしては、古典的なものとして、ライリーの法則やハフモデルなどがある。これらの商圏分析モデルは、「ある消費者がある商業施設を選択する確率は、売場面積に比例する一方、二者間の距離に反比例する」との考え方を前提にしているのが特徴だ。実務的には、これらの商圏分析モデルを活用しながらも、それぞれの商業施設の特性や規模等に応じて、様々な定性分析や定量分析を実施していくことになる。
商圏分析、来店者予測、売上予測等において大きな影響をもつものとしては、以下の要因が指摘される。
①店舗面積
②建物構造
③視認性
④動線
⑤駐車場台数
⑥施設へのアクセスやアプローチの難易度
⑦店舗前交通量(ポイント規模)
⑧競合状況
⑨対象マーケットの規模
⑩対象マーケットの特性
商圏分析の実際
商圏分析の手法やデータベース等は非公開であることが多いが、ここでは参考として、温浴施設における商圏分析の実際の一部を紹介したい。
(1)商圏人口の算定
対象となる温浴施設の商圏人口を算定する。その方法としては、簡易的に地図を使ったり、自動車で実測するなどがある。もっとも、「施設から半径2キロ」のように地図を使う方法はあくまで簡易的なものであり、実際の商圏は地形・構造物等の存在・交通状況等によりかなりいびつな形となることに注意が必要だろう。
(2)対象施設の評価
上記の商圏分析の手法とポイントで指摘したような点も含めて、対象となる温浴施設の評価を行う。温浴施設の場合には、店舗面積、駐車場台数、視認性、施設へのアクセスやアプローチの容易さ、競合状況が特に重要だ。
(3)来店者予測
多店舗展開している温浴施設事業者や実績を有するコンサルティング会社などでは、過去の実績に基づくデータベースを保有している。特に、会員組織をもつ事業者では、実際の会員のデータから来店者予測を行っており、相対的に高い予測精度となっている。典型的な来店者予測の算式は以下の通りである。
来店者予測=商圏人口×顧客化率×来店頻度
商圏人口: 上記(1)で算定
顧客化率: 対象となる施設に経常的に顧客となる割合。上記(2)等で算定
来店頻度: 対象となる施設に1ヶ月当り来店する頻度。上記(2)等で算定
ちなみに、温浴施設の場合においては、1次商圏とは自動車で5分以内を指すことが一般的であり、Aクラスの施設の場合には、顧客化率30%、来店頻度1.2回が標準値となる。温浴施設の成否は、5分以内商圏の人口、対象施設の水準、競合状況が大きな鍵となっている。
タグ:
-
分析
売上
商業施設
スーパー
戦略
ポイント
会社
スーパーマーケット
店舗
テナント
商圏
商圏分析
コンビニ
重要
不動産
商品
改善
手法
商業
方法
集客
顧客
温浴施設
策定
定量分析
実際
定性分析
サービス
立地
ハフモデル
競合
ビル
商圏人口
活用
特徴
必要
データ
施設
プロセス
対象
ショッピングセンター
コンサルティング
要因
マーケット
来店頻度
割合
組織
紹介
消費者
規模
定性
事業
比較
百貨店
評価
www
意義
モデル
ライリー
以下
価格
売上予測
指摘
戦略策定
来店
構造
次商圏
業態
人口
運営
定量
状況
デザイン
特性
複合施設
法則
再生
視認性
実施
段階
予測
コンサル
アミューズメント
作業
プロ
算定
point
動線
水準
実績
アプローチ
一般的
面積
範囲
売場面積
駐車場
分析手法
不可欠
自動車
売上改善
建物
構築
影響
注意
コンビニエンスストア
存在
オフィス
オフィスビル
徒歩
交通量
具体的
上記
距離
参考
分類
通常
正確
リニューアル
以上
都道府県
一部
典型的
電車
一般
地図
本稿
データベース
時間
商圏分析手法
タイプ
新規
来店者予測
merging
自転車
中核
最寄品
売場
温浴
コンビニエンス
クラス
消費
個店
選択
地域
半径
保有
頻度
確率
左右
商圏規模
算式
実務的
競合分析
開発
駐車場台数
買回品
対象施設
会員
利用
来店者
競合状況
顧客化率
ハフ
アクセス
買回
場面積
デパート
成否
タイ
キロ
多店舗
コンビ
物件
店舗前交通量
多店舗展開
複合
店舗展開
入居
出店戦略
日常的
ターミナル
前提
公開
食料品
地理的範囲
店舗面積
分程度
ショッピング
視認
家庭
最寄商圏
スーパ
業者
比例
入居者
センター
実務
都心
台数
容易
品質
購入
買回商圏
難易度
事業者
不動産物件
顧客化
sr
移動時間
市町村
既存店
日常
分以内
簡易的
新規開発
店舗前
単位
複合施設等
医薬品
商圏分析と売上方程式
商圏分析と売上方程式
このホームページにおいては、「商圏分析の手法と実際」や「商業施設の売上方程式」を紹介してきた。商業施設のバリューアップ・再生戦略においても、商圏分析と売上方程式は最も重要なツールであることに加え、売上予測というツールを通じても、これらの二者は密接にリンクしている。実際に、当社グループの実務においても、商圏分析、売上予測、売上方程式の3つをリンクさせて商業施設のバリューアップ・再生戦略の策定や実行に活用しているが、本稿では、それらの概要と実務事例の一部について紹介していきたい。
商圏分析の実際
図表1は、当社グループにおける商圏分析の実際をチャート化したものである。商圏分析は、対象となる商業施設における来店客予測や売上予測を行うために実施するものであるが、最初のプロセスとしては、商圏人口の算定を実施することが挙げられる。商圏人口の算定に当っては、データベースを使った簡易評価を行った後で、徒歩や自動車での実地調査を行うプロセスとなる。
次の作業としては、対象となる商業施設や競合となる商業施設の評価が指摘される。これらの評価に当っては、ヒヤリングやアンケート等を含む各種の実地調査や比較分析を実施するが、中核となる作業は、第1回目でも紹介した「商圏分析の10大ポイント」を活用しての定性・定量分析だ。
これらのプロセスを踏まえて来店客数予測や売上予測を実施していくことになるが、特に売上予測においては、各種の「売上方程式」も併用しながら、「商圏分析の10大ポイント」を統計解析と比較分析両面において活用していることが、当社グループにおける分析手法の大きな特徴となっている。
商業施設の売上方程式
本章の第3回目においては、「商業施設の売上方程式」として、2つの事例を紹介したが、本稿においては、さらに基本的な考え方とともに、2つの事例を紹介したい。
売上方程式とは、「売上=数量×単価」のように、売上を構成する要因を「因数分解」して売上を分析する手法である。どのように「因数分解」したら効果的であるのかは、対象となる商業施設の特性によっても異なるが、来店客数に着目した売上方程式(「売上=来店客数×客単価」)、販売数量に着目した売上方程式(「売上=販売数量×1品当り単価」)、売場面積に着目した売上方程式(「売上=売場面積×坪効率」)等が主なものとして指摘できる。
図表2は、来店客数に着目した売上方程式の事例である。この売上方程式においては、来店客数を既存客数と新規客数に分解しているが、対象となる商業施設によっては、来店客数を「来店客数×買上率」、「通行客数×来店率×買上率」等に「因数分解」した方が店舗実体をより正確に反映したものになる場合もある。
図表3の売上方程式は、当社グループが中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略において多用しているものの一つである。地方における多くの中規模商業施設では、「イオンモール」等に代表される超大型競合施設の誕生により、実質的な対象商圏が狭小化していることが観察されている。このような中規模商業施設を対象としてバリューアップ・再生戦略の策定や実行をしていく場合には、複数の売上方程式を併用するなかにおいても、売上を「商圏人口×1人当り消費額×当該マーケットにおけるシェア」に分解した上で、各種の定性・定量分析を実施していくことが不可欠だ。なぜなら、商圏が狭小化している中規模商業施設においては、より大きな商圏を対象とする大規模商業施設以上に、対象商圏の市場規模や消費額の正確な把握と競合対策も含めたシェアアップのための店舗戦略が重要となるからである。また当該売上方程式は、従来の売上方程式が既存顧客の実体把握には適している一方で、対象となるマーケット全体の状況や拡販余地をきちんとカバーしていないという欠点を補うという重要な役割も果たしている。
マーケット環境がさらに厳しくなってきているなか、適切なバリューアップ・再生戦略の策定と実行には、徹底的な分析・評価がその前提として不可欠であり、各種の定性・定量分析力並びに商業施設の運営・管理経験に基づく洞察力を踏まえた商圏分析と売上方程式は、マーケット・消費者分析や競合施設・類似施設分析などとともに、分析・評価作業の中核を成すものであることを強調しておきたい。
図表1.商圏分析の実際
図表2.「マージングポイントの商業施設の売上方程式」③
図表3.「マージングポイントの商業施設の売上方程式」④
タグ:
-
分析
イオン
売上
商業施設
イオンモール
戦略
事例
ポイント
店舗
商圏
商圏分析
重要
客数
手法
アップ
商業
因数分解
客単価
顧客
来店客数
分解
売上方程式
策定
定量分析
実際
競合
商圏人口
活用
特徴
データ
マージングポイント
施設
方程式
プロセス
対象
当社
マージン
要因
マーケット
買上率
ツール
バリューアップ
実行
紹介
消費者
規模
定性
販売
比較
モール
図表
評価
www
中規模商業施設
売上予測
坪効率
洞察
来店率
市場
指摘
来店
単価
人口
運営
定量
市場規模
状況
ホームページ
再生戦略
特性
再生
実施
予測
作業
プロ
管理
算定
シェア
point
面積
来店客
徹底的
売場面積
効果的
グループ
分析手法
不可欠
自動車
バリュー
対策
代表
各種
概要
把握
マージング
店舗戦略
効果
経験
徒歩
環境
アンケート
対象商圏
回目
狭小化
通行客数
正確
構成
買上
数量
中規模
シェアアップ
以上
着目
消費額
一部
全体
大型
役割
大規模商業施設
調査
狭小
本稿
データベース
統計
既存顧客
新規
merging
ページ
中核
売場
カバー
消費
観察
通行客
通行
基本的
チャート
適切
競合対策
最初
強調
当該
併用
従来
実地調査
本章
リンク
場面積
複数
拡販
地方
来店客数予測
実質的
前提
反映
基本
洞察力
比較分析
来店客予測
実務
因数
販売数量
多用
大規模商業施設以上
sr
競合施設
誕生
分析力
商業施設における立地の重要性
立地の重要性を巡る問題意識
欧米での不動産ビジネスにおいては、不動産のミクロ的要因としては、「ロケーション、ロケーション、ロケーション」(「一にも二にもロケーション」という意味)と、立地条件が最も重要であることが強調される。本邦でも、収益還元法の下では初めてのマーケットの下落局面を経験しているなかで、立地条件の違いで物件価格の下落幅が大きく異なることを目の当たりにして、立地条件の重要性が再認識されている。
このように、感覚的に立地条件の重要性は実務家の誰もが認識している一方で、理論的かつ実践的に立地条件を理解しているプレイヤーは少なく、この点も現在のマーケット下落局面において明暗を分ける大きな要因となっている。本稿では、不動産の物件タイプのなかでも特に立地条件が重要となっている商業施設の立地を考察していくことで、広く不動産全般の立地条件についての考え方の指針を示していくことにしたい。
立地条件の重要性
図表1は、本章においてこれまで何度か紹介してきた「商業施設の売上方程式」である。今回の方程式は、当社グループでも実務的に最も多用しているものの一つであり、売上を「客数×客単価」に分解した後、「客数」を「来店客数×買上率」に分解、さらに「来店客数」を「通行客数×来店率」に分解していくことで、立地条件を定量的に検討することが可能になっている。
図表2は、図表1の売上方程式のなかで、特に通行客数や買上率に着目して「因数分解」したものである。対象となる商業施設における「客数」の最も基本的な「分母」となるものは、図表2の通り、「通行客数」である。消費者が、対象となる商業施設や物販・飲食等の個店を認識し、実際に立ち寄り、最終的にそこで商品・サービスを買上げるか否かは、これらの店舗前を通行する客数(郊外店舗等の場合には車での通行量)が基本になっているわけだ。ここでは、対象となる店舗前を通行した消費者(「通行客」)のうち、実際に同店舗を視認した消費者を「視認客」、さらに同店舗に入店した消費者を「入店客」、さらに同店舗で実際に商品・サービスを買上げた消費者を「買上客」と定義している。これらの関係に着目して数量的なデータとしたものが、「通行客数」、「視認率」、「入店率」、「買上率」等である。この内、本稿のテーマでもある立地条件の根幹を成すものが、「通行客数」や「視認率」である。図表2でも示したように、「入店率」、「買上率」、「来店頻度」等は、立地戦略よりは店舗戦略やマーケティング戦略に属する内容であり、詳細は別稿において紹介していきたい。
立地条件の特徴
このように、立地条件を決定付ける最も重要なファクターは対象立地における通行量である。商業の分野においては、特に通行量は最重要視されており、売上の8割程度が通行量で決定されるとも言われている。実際に定量分析してみると、業態によっては、店舗前通行客数の違いが、そのまま売上の違いに比例する個店も少なくない。
図表1に戻って、立地条件の構成要素を考察してみると、商圏人口(連載48回ご参照)、視認性、店舗構造が指摘される。視認性については、徒歩での来店が中心となる繁華街店舗と車での来店が中心となる郊外店舗とでは大きく定義が異なることに注意が必要だ。店舗構造においては、立地条件という側面からは、間口の広さが最も重要であり、繁華街店舗の場合には店舗全体を認識できる範囲、郊外店舗の場合には駐車場の入り口の広さが間口の広さに相当する。間口の広さは、個店で見た場合には特に重要であり、同じ立地における同じ面積の店舗であっても、間口の広さによって実際に入店する人数が異なることにも注意が必要だ。
立地選定のポイント
図表1.「商業施設の売上方程式」
図表2.「客数」の「因数分解」図
タグ:
-
分析
売上
商業施設
戦略
ポイント
店舗
商圏
重要
不動産
客数
飲食
ビジネス
商品
商業
因数分解
客単価
マーケティング
来店客数
分解
売上方程式
定量分析
物販
実際
入店率
サービス
立地
商圏人口
特徴
必要
データ
立地条件
施設
方程式
対象
当社
要因
マーケット
買上率
来店頻度
内容
紹介
消費者
重要性
図表
www
意味
連載
問題
価格
理解
来店率
指摘
通行量
意識
来店
構造
単価
業態
人口
定量
定義
視認性
テーマ
入店
決定
収益
point
条件
面積
来店客
範囲
要素
駐車場
視認率
グループ
考察
注意
店舗戦略
間口
立地戦略
経験
中心
徒歩
今回
詳細
ロケーション
関係
側面
現在
通行客数
構成
買上
数量
検討
認識
着目
全体
最終的
本稿
感覚
タイプ
merging
ファクター
分野
参照
消費
個店
通行客
通行
基本的
実践
実践的
頻度
最重要
実務的
強調
可能
本章
郊外
タイ
重要視
物件
人数
店舗構造
問題意識
同店舗
買上客
理論
視認
基本
店舗前通行客数
比例
明暗
入店客
決定付
郊外店舗
実務
因数
多用
下落局面
sr
理論的
店舗前
店舗全体
相当
再認識
対象立地
収益還元法
繁華街店舗
ミクロ
中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略
売場面積3,000-5,000坪クラスの中規模商業施設は、イオンモールに代表される大規模商業施設との競合や消費の低迷等により競争力が低下してきている。特に大手GMSの旧業態店舗をキーテナントとする施設や新たなトレンドやコンセプトに対応できていない施設は苦戦を強いられている。
当社における取引実務と知見を基に、苦境に喘ぐ中規模商業施設の典型的な事例を通じて、問題の構造と本質とともにバリューアップ・再生戦略の策定と実行手法を紹介していきたい。
問題の構造と本質
中規模商業施設と言った場合に明確な定義は存在しないが、一般には、(1)売場面積3,000-5,000坪クラスで、(2)GMSやSM等をキーテナントとし、その他の専門店を含む商業施設を指すことが多い。このような商業施設は、開業して15年前後が経過し、キーテナントとの賃貸借契約の更新時期を迎えているところも多い。また本年4月には、イオンが100店舗にも及ぶ閉鎖を発表したように、キーテナントであるGMSにおいても、景気の低迷等を受けての本業不振から不採算店舗を閉鎖する動きを明確にしており、中規模商業施設全体の不透明感が高まっている。
図表1は、苦境に喘ぐ中規模商業施設の典型的な事例をチャート化したものである。当社グループでバリューアップ・再生を行っている複数の事例が題材となっているが、運営が厳しくなっている中規模商業施設の大半が、この典型例と同様の問題を抱えているものと観察される。
戦略分析(3C分析)の内、消費者・マーケット分析(Customer分析)を見てみると、図表1の通り、主に5点の特徴が指摘される。この内、「消費者プロフィールの変化」については、「人口が伸び悩んだり減少している」、「老齢化が進んでいる」、「家族構成が変化している」等が共通する現象だ。消費者・マーケットにおける最大の要因は、「景気の低迷を受けての消費の低迷」だろう。それぞれの商圏においては、まさに限られた消費者の限られたパイを巡っての争奪戦が繰り広げられているわけだ。
競合他社分析(Competitor分析)の結果においては、イオンモール等の大型店舗やしまむら等のカテゴリーキラーとの競合が最も大きな要因だろう。商業施設においては、従来は「GMS対GMS」、「SM対SM」など、同じ業態間での競合が競争戦略の大きなポイントだった。もっとも、しまむら、ユニクロ、大手家電量販店などのカテゴリーキラー登場により、消費者は「カテゴリー」(アパレル、家電、スポーツ用品、ベビー用品等、ある特定の商品分野)によって購買する店舗を選択するような消費行動に変化してきたことも見逃せない点だ。
このような消費者や競合他社の動向を受けて、対象となる中規模商業施設における問題の構造と本質は、「競合施設誕生による対象商圏の狭小化と狭小化した対象商圏のニーズに合致しない店舗運営」ということに集約されるだろう。商業施設ビジネスにおいては、競合施設が増えると、競争力の低下した施設では対象となる商圏の地理的範囲が狭くなり、対象となる商圏人口が減少する傾向にある。このようなことからも、自社施設分析(Company分析)の結果においては、「大型店舗やカテゴリーキラーの登場による競争力の低下」、「小商圏における消費者のニーズに合致しない店舗運営」が典型的な現象として指摘される。
尚、キーテナントとしてのGMSの状況も、中規模商業施設が不振となっている大きな要因として指摘される。特に、通常は2層式商業施設の2階に位置していることが多いGMS内の衣料品部門については、以下の現象が頻繁に観察され、施設全体の売上や集客力にも影響を及ぼしている。
①対象となる商業施設の実質的な商圏規模に合致しない衣料品マーチャンダイジングとなっていること。
②食料品部門の顧客層と衣料品部門のマーチャンダイジングでミスマッチが発生していること。
③GMS側が衣料品部門に対して消極的になっており、メーカーからの委託販売を増やすなど機会ロス重視策よりも損失回避重視策を採用、施設全体の集客力や魅力度を低下させていること。
バリューアップ・再生可能性の検討
当社グループにおいて、これまで述べたような中規模商業施設を取り扱う場合、まず最初に実施するのはバリューアップ・再生可能性の検討だ。この作業は、基本的に後で述べる「分析・評価」のプロセスと同様ではあるが、当該案件に正式に取り組むかどうかの大局的な見極めとしては、特に「商圏分析・施設評価の10大要因分析」を活用している。
特にそれらのなかでも、立地、施設面積、人や自動車の動線や交通量が、対象施設がバリューアップ・再生できるか否かの重要な判断材料となることが多い。商業施設においては立地が最も重要であり、立地と店舗前交通量は、売上に直接影響する要因だ。商業系テナントを複合施設等に誘致しようとするデベロッパーのなかには、「賃料をある程度引き下げるので、物販テナントを入れられないか」という照会も多いが、立地が劣ることにより店舗前交通量が少ないことは売上低迷の最大要因であり、コストの一部である賃料を引き下げたくらいではカバーし切れないものであることに注意が必要だ。
バリューアップ・再生戦略の全体構造とプロセス
図表2は、中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略の全体構造とプロセスを示したものである。先に述べた「問題の構造と本質」から示唆される通り、典型事例で取り上げたような中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略において重要となるソリューションの方向性は以下の通りである。
①狭小化している対象商圏の消費者・マーケットの正確な把握
②正確に把握した対象小商圏のニーズに合致したテナントミックスやマーチャンダイジングの策定と実行
③その他、対象小商圏に対応したシェアアップ戦略や各種施策の策定と実行
小商圏を対象とする中規模商業施設のバリューアップ・再生戦略を成功させるには、より広い商圏を対象とする大規模商業施設以上に、対象商圏の市場規模や消費額の正確な把握と競合対策も含めたシェアアップのための店舗戦略が重要だ。これは、小商圏では大商圏よりも市場規模が小さいことから、特定顧客や特定カテゴリーへのフォーカス戦略は不味であり、商圏内のより多くの顧客層やカテゴリーに対応して一人当り消費額を引き上げていくことが不可欠となるからだ。
このように、対象商圏の消費者・マーケットの正確な把握が中規模商業施設では特に重要であることから、前回の連載でも述べた通り、当社グループでは「商圏分析」と「商業施設の売上方程式」を併用して対象商圏の市場規模や特性の分析・評価を行っている。「商圏分析」においては、図表3の通り、「商圏人口分析」と「対象商業施設の評価」を踏まえて、「売上方程式」を活用しながら、来客予測や売上予測を実施している。「商業施設の売上方程式」については、本章においてこれまで4つの事例を紹介したが、今回の典型例のような中規模商業施設に対しては、図表4の通り、売上を「商圏人口×一人当り消費額×当該マーケットにおけるシェア」に分解した上で、各種の定性・定量分析を実施し、戦略の策定と実行を進めていくのが効果的だ。
有力パターンの策定と実行
対象小商圏の市場規模や特性を正確に把握した後は、バリューアップ・再生戦略において実務的に最も重要となる対象小商圏のニーズに合致したテナントミックスやマーチャンダイジングの策定と実行を進めていくことになる。
当社グループにおいては、以下のような小商圏の特性を踏まえながら、テナントミックスについては、キーテナントであるGMSの撤退や入れ替え可能性も同時に考慮しつつ、通常は「有力64パターン」及び「最有力8パターン」を策定した上で、対象施設のプロデュース業務やリーシング業務を行っている。
①市場規模が小さいことから、なるべく多くのカテゴリーや品種を品揃えすること。
②買上点数アップ等により、一人当りの消費額を増やすことに貢献するものであること。
③購買頻度が高く、より生活に密着したカテゴリーや商品を品揃えしていること。
④フォーカス戦略や高級志向は不味であり、より多くの顧客層を集客できるものであること。
⑤売れ筋価格は商圏人口によって変動することから、できるだけ低価格訴求力の高いものであること。
その他のバリューアップ・再生戦略としては、「分析・評価」の段階で策定した「商圏分析・施設評価10大要因分析」の要因や「売上方程式」の因数を向上させていくことが重要となる。また当社グループにおいては、通常は特定店舗内の特定商品群を対象としているカテゴリーマネジメント(業態やメーカーではなく、カテゴリーを戦略単位とするマネジメント手法)を、商業施設単位での比較分析や対象商業施設のテナントミックス策定等にも活用している。特に、カテゴリーマネジメントの本質でもあるCDT(消費者購買意思決定ツリー)を当社独自の手法で応用し、対象となる商圏における消費者がどのような優先順位に基づいてどこでどのような購買を行っているのかという「施設間の典型的購買パターン分析」(「CDT5W1H分析」)を実施しているのが大きな特徴だ。
最後に、対象となる実質的な商圏が狭小化している中規模商業施設においては、最も基礎的な顧客層となる一次商圏(車で5分以内程度の商圏)を死守していくことが極めて重要だ。顧客数がより限られている小商圏においては、サービス低下等に伴う客離れはまさに死活問題だ。中規模商業施設においては、対象商圏のニーズに合致したテナントミックスやマーチャンダイジングとともに、施設の運営・管理におけるソフト面のサービス向上や顧客満足度向上が、大規模店舗以上に重要となることを指摘しておきたい。
タグ:
-
分析
イオン
売上
商業施設
イオンモール
戦略
事例
ポイント
店舗
テナント
商圏
商圏分析
ユニクロ
重要
3C
客数
アパレル
ビジネス
商品
リーシング
賃料
手法
アップ
商業
GMS
CDT
集客
顧客
スポーツ
プロデュース
分解
売上方程式
策定
定量分析
物販
サービス
立地
向上
競合
商圏人口
活用
特徴
必要
施設
順位
方程式
プロセス
対象
当社
要因
マーケット
集客力
バリューアップ
実行
コンセプト
成功
紹介
消費者
規模
定性
販売
競合他社
比較
モール
機会
図表
同時
マネジメント
評価
ロス
www
大手
中規模商業施設
以下
テナントミックス
低迷
連載
自社
問題
価格
売上予測
売上低迷
デベロッパー
市場
指摘
全体構造
結果
構造
次商圏
業態
人口
運営
貢献
定量
市場規模
状況
カテゴリーキラー
コスト
業務
再生戦略
特性
複合施設
定義
再生
実施
段階
部門
予測
行動
ニーズ
作業
ツリー
プロ
決定
品揃
カテゴリー
管理
点数
シェア
point
動線
最後
他社
面積
動向
競争戦略
顧客数
家電
方向性
範囲
用品
購買
本質
売場面積
効果的
家電量販店
グループ
客層
時期
不可欠
自動車
バリュー
明確
キーテナント
対策
代表
影響
各種
登場
把握
合致
対応
注意
傾向
パターン
店舗戦略
存在
効果
カテゴリーマネジメント
メーカー
ベビー
今回
交通量
変化
対象商圏
一次商圏
通常
狭小化
買上点数
正確
構成
衣料品
戦略分析
買上
中規模
検討
顧客層
賃貸
シェアアップ
以上
消費額
一部
全体
独自
大型
典型的
トレンド
施策
ソリューション
専門
チャン
専門店
発生
苦戦
一般
大規模商業施設
狭小
店舗運営
誘致
最大
施設全体
プロフィール
merging
SM
生活
分野
売場
応用
カバー
小商圏
要因分析
考慮
クラス
消費
観察
選択
採算
低価格
本年
基本的
低下
重視
購買頻度
購買意思決定
頻度
知見
意思決定
量販店
チャート
同様
題材
商圏規模
優先
実務的
競合対策
最初
可能性
魅力度
マーチャンダイジング
可能
対象施設
当該
フォーカス
特定
取引
有力
魅力
併用
満足度
カテゴリ
従来
採用
大半
直接
閉鎖
競争
見逃
本章
15
対象小商圏
不振
場面積
複数
典型例
優先順位
店舗前交通量
複合
消費者購買意思決定
来客
衣料品部門
衣料
大型店舗
実質的
位置
食料品
地理的範囲
競争力
苦境
基礎
ミックス
共通
損失
家族
現象
基本
本業
景気
正式
死活問題
死守
減少
低迷等
消費者購買
消費行動
比較分析
実務
商業系
集約
因数
開業
家電量販
客離
撤退
CDT5W1H
Company
Competitor
Customer
不採算店舗
不採算
不味
基礎的
大規模商業施設以上
sr
大要因
大要因分析
高級志向
高級
示唆
分以内
施設評価
競合施設
方向
トレ
店舗前
再生可能性
発表
単位
複合施設等
自社施設分析
訴求力
見極
対象商業施設
経過
前回
志向
ビー
誕生